4回目の緊急事態宣言は五輪と併走 医療崩壊へ(TOKYO)

OUTLINE【2021.10.12】

4回目の緊急事態宣言が発出されたのは7月12日(この時点では8月22日までと発表)。3回目の同宣言解除から、わずか3週間後のことだった。そもそも、感染者がまだ下げ止まり状態だった6月20日に解除を急いだのは、7月23日に開幕する五輪を見込んでのこと。1か月間でワクチン接種をさらに加速させ、安心・安全な状態で五輪を有観客で行うことが、首相および政権幹部のシナリオだったという( 朝日新聞2021.6.18.「首相『俺は勝負したんだ』 宣言解除、五輪へのシナリオ」 )。が、感染者の減少がみられないことに加え、変異ウイルス「デルタ株」の急速なまん延、ワクチン未接種の40~50代重症者の増加、夏休みや五輪による人の移動など、懸念材料の多さでシナリオは狂い、五輪を10日後に控えたタイミングで、4回目の緊急事態宣言に突入することとなり、菅首相の五輪〝有観客〟の夢も霧消した。

東京など7都道府県では、まん延防止等重点措置に移行した間に5000人以内の「大声なし」イベントについては100%キャパシティが復活していたが、宣言により50%に逆戻り。とはいえ、7月11日までに発売されたチケットはキャンセル不要等、前回の宣言時と同様のお目こぼし的措置は健在で、かなりの勢いで増え続ける感染者数と逼迫する医療現場の状況に、果たして即していると言えるのか、不安を覚えるほどだった。案の定と言うべきか、音楽業界では、政府や自治体と協議の上で開催を決定したライブが、地元医師会等、行政以外の要請で中止になるケースが増え、業界団体が「ライブを行う権利」について共同声明を出す事態に至った。

7月23日、東京五輪が開幕。以後も感染者・重症者は増え続け、東京では7月29日に新規感染者が3865人で3日連続過去最多となり、翌30日、緊急事態宣言の8月31日までの延長が発表された。舞台関係者のコロナ感染による公演中止も相次いだが、明治座の『エニシング・ゴーズ』のように、感染者発覚ではなく「『緊急事態宣言』において販売制限が設定され、予定通りに上演することが難しく」なったことを理由に、公演数を減らすケースまで現れた。

8月12日、東京都のモニタリング会議は「制御不能、自分の身は自分で守る段階」と危機を訴え、政府の分科会は「混雑した場所への外出の半減」を提起。例としてデパ地下やショッピングモールへの入場規制を挙げる一方、観客が声を発しないコンサートや演劇等については、「感染対策を徹底した上で利用可能」と位置づけた。8月13日には、東京の新規感染者数は5773人、重症者数227人と、ともに過去最多を記録。8月16日、緊急事態宣言の9月12日までの延長が発表された。

8月23日、上演を開始していた明治座『エニシング・ゴーズ』は、公演関係者23人のコロナ陽性反応を確認したと発表。同日には新生・新宿シアタートップスのこけら落とし、IHIステージアラウンド東京など、感染者発覚による公演中止の報が相次ぎ、デルタ株の影響が、舞台芸術界でもピークを迎えていることが察せられた。8月25日には、日本芸術文化振興会が、8月20日の国立劇場の観客1名にコロナ感染が確認されたことを発表。同日の他観客への注意喚起を行うという、新たなケースが目を引いた。8月28日、東京の重症者数は過去最多の297人を記録。自宅療養=自宅放置の患者数も、8月末までは連日20,000人前後という、医療崩壊状態が続いた。

9月9日、9月12日までとしていた緊急事態宣言の9月30日までの延長が決定。9月に入って新規感染者数の激減ぶりが目立つようになっていたが、重症者数は高止まりで、医療現場の逼迫が続いているためとの理由だった。延長が始まった9月13日時点で、ワクチン接種2回完了者が人口の5割を超えた。舞台芸術界においても、9月中旬以降は、コロナ感染を理由とした公演中止や休演は、あまり目に付かなくなった(当サイト掲載の稼働39劇場 においては、9月13日以降の公演中止は事前に決定されていた招聘公演1件、感染拡大を考慮した延期1件で、感染者発覚による中止は0件)。

9月28日、菅首相は「ワクチン接種と中和抗体薬の投与が進み、安定的に医療を提供できつつある」として、緊急事態宣言を9月30日で全面解除すると発表した。9月30日、東京の新規感染者数は218人で、対前週比47.1%。重症者数100人、死亡12人。約2か月半(81日)ぶりに宣言が解除された10月1日、ワクチン接種率がアメリカを抜いたことを強調した菅首相は、その3日後に内閣総辞職し、官邸を去った。(ND)

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