助成金カットに揺れるロンドンの劇場やシアター・カンパニー Part 1 (LONDON)

ナショナル・ポートフォリオ組織(NPO)の立場を失ったイングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)の拠点、ロンドン・コロシアム

OUTLINE【2022.11.19】

 

11月4日、長引くコロナ禍と生活費危機で疲弊するロンドンの劇場やシアター・カンパニーに大きな衝撃が走った。この日は、イングランドにおける演劇や音楽など文化・芸術分野の組織を対象とした助成金の支給先および配分が発表された日だった。今回の助成期間は、2023年4月から2026年3月まで。この発表で、ロンドンに拠点を置くいくつもの組織への助成金が減額されただけでなく、ドンマー・ウェアハウス(Donmar Warehouse)やイングリッシュ・ナショナル・オペラ(English National Opera(ENO))など、演劇ファンには馴染み深い劇場やカンパニーが助成金を全く受けられなくなることが判明したのだ。

文化・芸術分野の助成金の支給先および配分を決めているのは、デジタル・文化・メディア・スポーツ省(Department for Digital, Culture, Media and Sport(DCMS))が管轄する政府外公共機関(Non Departmental Public Body(NDPB))の一つであるアーツ・カウンシル・イングランド(Arts Council England(ACE))。助成金は政府からの交付金と国営宝くじの収益金からなり、いくつかの事業があるが、なかでも大きな部分を占めるのが今回、発表されたインベストメント・プログラム(Investment Programme)だ。ウエストエンドの商業劇場以外の劇場やシアター・カンパニーの多くが、同プログラムの助成金を受ける組織であるナショナル・ポートフォリオ組織(National Portfolio Organisation(NPO))となっている*。

元々、今回は発表前から、ロンドンに拠点を置く劇場やシアター・カンパニーが苦戦することは予想されていた。というのも申請前の時点で、ACEは政府から、文化・芸術分野における地域格差是正のために、ロンドンを拠点とする組織に対する助成金を減らし、これまで十分な助成金を得ていなかった地域に回すように通達されていたのだ。そしてACEは申請組織に対して、ロンドンを拠点とする組織の一部はNPOの立場を失う、または助成金が減額される可能性があると警告。また、ロンドンに拠点を置くすべての組織に、拠点を移すことを検討できるか考えるように伝えていた。

より具体的に言うと、政府はACEに対し、ロンドンに拠点を置く組織に対する助成金を2023年から2026年までの3年間で7000万ポンド以上減らし、これまで十分な助成金を得ていなかった地域に充てるよう指示。2022年4月から2025年3月までの期間に4350万ポンドがDCMSからACEに追加支給されるが、そのすべてがロンドン以外の地域の活動と組織の支援のために使われねばならない、ともしていた。

歴史的に見て十分な助成金を得ていなかった地域と認定された109の地域は「レベリング・アップ・フォー・カルチャー・プレイシズ(Levelling Up for Culture Places)」に指定。助成金分配の段階で優先されることになっていた。加えて、年間200万ポンド以上の助成金を得た組織は、レベリング・アップ・フォーカルチャー・プレイシズの地域において地元のコミュニティや組織と共同で行う活動を2026年3月末までに15%、増やすことが求められていた。

こうした状況下、申請組織は固唾を飲んで、発表予定日である10月26日が来るのを待っていた。しかし前日になって急遽、発表延期が知らされる。新たな日程が通知されなかったため、気が気でない組織も多かったことだろう。結局、発表が行われたのは11月4日だった。(SM)

助成金カットに揺れるロンドンの劇場やシアター・カンパニー Part 2 へ続く

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